地方創生ネタで感じることをもう一つ。

淡路島に移住後、実は何度か自治体の移住促進施策に触れる機会がありました。地方の人口減少を補うため、移住者に助成金を渡したり、様々なプロモーション施策をうったり、という訳です。淡路島に限らず、地方創生の名の下に日本中で行われています。もともとネガティブなイメージしかありませんでしたが、その負のイメージは私の中でますます大きくなりつつあります。本件、ちょっとまじめに書いてみたくなりました。

人口減少を前提に

そもそも、人口減少に抵抗するという考え方そのものが非現実的です。日本全体で人口が減少していく中、国内の移住者によって地方の人口を増やすなんて。私には絵に描いた餅にしか見えません。
よく東京一極集中の是正とも言われますが、私は「一極集中して何が悪い?」と思ってるくらいです。むしろ、東京にヒト、モノ、カネを集め、超一流都市として世界と勝負した方が、余程日本のためになるでしょう。

地方に必要なのは、人口減少を前提条件として受け入れ、あらゆるインフラを身の丈にあった適正サイズに再構築することではないでしょうか?
税金を使う方々、つまり自治体が10年後に今の規模のまま残っている可能性は低いと思いますが、地方そのものが消滅する訳ではありません。そこに住む人々が普通にいる限り。市役所がちょっと遠くなるかもしれませんが、税金で生活が厳しくなるよりは全然マシでしょう。仮に自治体だけが生き残り、地方住民が疲弊していたら、それこそ本末転倒というものです。

と同時に、税金を払う人達が必要になります。地方ならではのユニークなビジネスを、身の丈にあった適正規模で作り出すことが肝になるでしょう。私のいた家電業界がその典型ですが、大量生産/大量消費を前提としたコモディティビジネスは急速に縮小しています。もはや大企業は自らの体重を支えきれない。恐竜みたいなもんです。逆に言えば、今の成熟した消費者は”大量生産品以外の何か”を求めているのです。地方を付加価値にして、大企業が手出しできないようなニッチなマーケットを作り出し、適切な規模でビジネスを回すというチャレンジには、私自身大いに可能性を感じます。

移住者誘致に助成金は必要ない

本気で移住を考えている人は、その地域の住環境が気に入ったから移住するのであって、助成金がもらえるから移住する訳ではありません
例えば私の場合、移住の際に浄化槽設置に対する補助金制度を利用しました。浄化槽を設置した方全員が利用できるので、移住者向けの制度ではありませんが、仮にもしこの制度がなかったら淡路島移住を思いとどまったかと聞かれれば、そんなことは絶対にありえません。淡路島という地域が気に入り、土地も既に購入していましたからね。

ただし、金につられて移住する人が実際存在するのも知っています。こういう方々は必ずしもその地域に魅力を感じている訳ではないので、田舎暮らしを満喫して金をもらい終わったら、新たな補助金を求めて次の地域へ移住します。これ、実話です。その典型例が地域おこし協力隊(の一部)。もちろん、中にはまじめな方もいらっしゃいますけどね。話がそれるので今回は割愛しますが、この制度は非常に問題が多いです。補助金に返済義務をつけるだけでも随分マシになるとは思いますが…。本気で地方への貢献を夢見ている方であればなおのこと、この制度の活用には慎重になられた方がいいでしょう。皆様の大事なキャリアになる訳ですから。

余談ですが、ビジネスにおいても、価格しか見ないような(金につられるような)ロイヤルティの低いお客様というのは、特に付加価値の高い商材を扱っている場合、絶対に相手にしてはいけないターゲット層です。一度は買ってくれるかもしれませんが、次はありません。より低価格の他社商品に逃げていくのです。そして最悪なのは、こういった層を相手にしたことでブランドが毀損し、本来その商材を愛してくれていたお客様まで逃げていくことです。会社員時代、直近の売上に目がくらんで販売価格を下げ、こういった層を狙いにいったビジネスがどうなったか、その末路を私は間近で見たことがあります。

移住促進策の本来

先週、今週と日帰りで神戸に出かけておりました。車とバスを乗り継ぎ、わずか1時間です。パスポート更新が主な目的でしたが、ついでに買い物を楽しみ、カフェでPC開いてお茶し、都会生活をenjoyしてきました。山と海にはさまれたコンパクトな神戸の街が私は大好きです。

神戸 三宮

田舎も楽しいけど、都会も楽しい。もう私にはどちらか一方を選ぶなんてできません。そして、こんなライフスタイルが実現できるのは淡路島だからこそ。不満があるとすれば、淡路島のバス停付近の無料駐車場が一杯で、有料駐車場を利用せざるをえなかったことくらいでしょうか。

で、思うのですよ。もし淡路島のバス停やフェリー乗り場周辺に無料駐車場を整備し、近隣都市へのスムーズなアクセスをよりアピールしたら…と。私のように独立&移住を考える方はまだ少ないかもしれませんが、淡路島に住みながら神戸/明石/大阪といった都会の会社に勤めるというライフスタイルに魅力を感じる方は、それなりにいるんじゃないでしょうか?少なくとも、こうした補助線を引くだけでターゲットが随分明確になります。

移住促進策をつきつめて考えていくと、より良い住環境の整備以外の何ものでもない気がします。これは移住うんぬん関係なく、本来自治体が取り組むべき仕事です。究極の移住促進策とは、その地域の住環境整備という足元の投資により一層取り組むことであって、移住者を金でつったり、ターゲットも設定せずに砂漠に水を撒くようなプロモーションを行ったりすることではないと思うのです。