前回はリスクを限定するという側面から資金管理を紹介しましたが、後述する通り、実は資金管理によって利回りも大きな影響を受けます。全く同じルール(X日移動平均からY%乖離したら仕掛け等)を使っていても、資金管理によって成績が驚くほど変わるのです。うまくやればプラスの成績を残せるルールであっても、資金管理を間違えれば成績が一転してマイナスになることまであります。
資金管理はそれだけで一冊の本ができるくらいのテーマですが、あまり複雑にするのもどうかと思います。以下、現時点での私の考え方を紹介しますが、投資家によって全く異なる考え方を持っているテーマでもあり、いろいろな考え方に触れた上で自身の方法を確立するのが良いでしょう。

投資金額全体の上限を決める

まず最初に株式投資にあてる金額を決めます。どれだけたくさんチャンスがあっても、この金額を超える分は購入できません。全資産の○○割、といった形で検討するのが一般的でしょう。

その後、ルールごとの上限金額を決めます。例えばコバンザメ投資にはA円、暴落時システムトレードにはB円、他のルールにはC円…といったイメージです。私は基本的に

  • 期待利回りが大きい
  • 最大ドローダウン(資産の下落幅)が小さい
  • 投資機会が頻繁に発生する

といった特徴を持つルールの優先度を上げています。期待利回りが大きいに越したことはないですが、期待利回りが小さく見えてもドローダウンが小さければ、レバレッジをかけて利回りを大きくすることは簡単です。又、「期待利回りが大きくてドローダウンが小さい」というような強固なルールは投資機会が少ない(=タマにしか発生しない)ことが多く、資金効率の悪化という側面もあります。3つのバランスが重要になります。

1銘柄への最大投資額を決める

この金額を大きく設定すると集中投資が可能となります。特定の銘柄に大きな金額を投資する訳ですから、成功した場合のリターン、失敗した場合のリスク共に大きくなります。逆にこの値を小さく設定すると、どれだけ良い銘柄に出会えても投入資金は限定的で、分散投資が基本となります。

私はこの値に「1銘柄で許容できる最大損失」を設定しています。資産がまだ小さく1銘柄あたり10万円までなら損失を許容という人もいるでしょうし、成功している投資家で1,000万円でも大丈夫という人もいるでしょう。保有資産によって人それぞれだと思いますが、いずれにしろ相対的にかなり小さな金額になるはずで、かなりディフェンシブな資金管理だと思います。

株式投資において損切は本当に有効か?

よく、損切りを設定して最大損失をコントロールするといった話を聞きます。想定と逆の値動きが発生した際、あらかじめ決めたところで手仕舞って損失を確定させるという方法です。最大損失をコントロールすべきという考えには同意できるのですが、私は株式投資においては、損切りで最大損失をコントロールすることはできないと考えています。
例えば、ある会社が突然倒産となった場合、どれだけ損切りを設定していても、ストップ安に張り付いて売りたくても売れないはずです。つまり、その銘柄に投資していた金額のほぼ全てが損失となる可能性は常にある訳です。稀なケースではありますが、たった一度のミスで退場する投資家は意外と多いのです。実際、私もこれに近い経験をしたことがあります。
又、損切りを設定すると実は成績が悪化することが多いです(ドローダウンは若干改善しますが…)。現在私が実践しているルールに損切りを設定したものは1つもなく、最大損失は資金管理によってコントロールされています。

ただし、この方法だと、期待値の高い特定銘柄に集中投資して大儲けするといったことはなくなります。例えば、先日の郵政三兄弟のIPOで大儲けした個人投資家は多いと思いますが、私のパフォーマンスは極めて地味です。
私には今の資金管理が居心地がいいのですが、「倒産なんて考えられない銘柄には大金を投入してもいいではないか」という考え方はあるとは思います。納得のいく線引きができれば私も検討するのですが…。

マーケットインパクトへの配慮

さらに、1銘柄への投入金額という意味では、もう1つ条件を設定しています。自身の売買が株価に影響を及ぼさないよう(マーケットインパクト)、売買株数は日々の出来高の0.1%まで、つまり1000分の1までとしています。実際やってみれば分かりますが、日々の出来高が極端に少なく、数十万円でも簡単にマーケットインパクトが生じてしまうような銘柄も普通に存在します。
余談ですが、例えば私がここで売買銘柄を公表して100人が同じことをしたとします。これだけで最大10%ものインパクトを持ち得るのです。インターネットで公開されていたり、業者が販売しているルールに対し、マーケットインパクトが考慮されているかどうか、最低限チェックされた方がいいでしょう。実際、その影響と思われる値動きが市場で散見されます。

銘柄の優先順位を決める

長くなりましたが、以上で各ルールごとに

  • 全投資金額(例:300万円)
  • 1銘柄への最大投資金額(例:50万円)

が決まりました。上の例の場合、最大6銘柄まで購入可能ということになります(レバレッジはなしと仮定)。

さて、本題はここから。
候補銘柄が毎日1銘柄とか2銘柄ならいいのですが、時として候補銘柄が100銘柄を越える日もやってきます。そして、それがいつ来るかは誰にも分かりません。以前記事にした暴落トレードなど、その典型例でしょう。では、

100を超える候補銘柄の中から実際にトレードする6銘柄をどうやって選べばいいのでしょうか?

これが、おそらく皆様が想像している以上に重要なテーマなのです。実は、この優先順位の付け方そのものが成績に多大な影響を及ぼします。コバンザメ投資であっても、暴落トレードであっても、成績に直結する有利な優先順位が存在するのです。

実際、候補銘柄が多数発生する暴落トレードでどの銘柄を選べばいいのか、私は多いに悩みました。年に数回しか発生しない暴落時の値動きをサンプルとしてメモしておき、Excelを使って散々分析したものです。

  • 大型株/小型株のいずれかが有利?
  • 値嵩株/低位株のいずれかが有利?
  • 下げ幅が大きい/小さい、いずれかが有利?
  • PER/PBRといったファンダメンタル指標は使える?
  • RSI/MACD等のテクニカル指標は使える?

いろいろ研究しました。その結果をここで公開することはできませんが、優先順位が成績に直結することはご存知であった方がいいでしょう。
いずれにせよ、以上で実際に投資する銘柄、そして投資する金額までが明確に決まったことになります。

市販の商材を選ぶ時には…

昨今、いろんなツールが市販され、分析も随分楽になりました。私自身、過去にはExcelで分析したり、証券会社のツールを使って簡単なプログラムを書いたりしていましたが、今は市販ソフトを利用しています。もし市販ソフトの利用を検討される場合は、最低限この記事に書いたような資金管理に配慮されているものを選ぶとよいでしょう。私が使っているソフトに興味のある方は、普通に紹介しますので個別にご連絡頂ければと思います。

コバンザメ投資、システムトレードと、私が現在実践している投資法の基本を紹介してきましたが、具体的な例がないため、なかなか理解しづらい点もあるかと思います。良い例となりそうな相場がきたら記事にするつもりでいますし、引き続き投資日記として随時記事を書いていきますので、合わせて参考にしてみて下さい。