消費支出の話を続けます。前回は消費増税の影響をご覧頂きましたが、今回はアベノミクスとも騒がれている金融緩和に焦点をあてます。まず、前回のグラフを再掲します。

日銀による金融緩和と実体経済(消費支出)

消費支出(移動平均)

季節変動による影響を消すため、消費支出の12ヶ月移動平均をとっただけのグラフです。
もう一目でお分かりになりますよね?
日銀による金融緩和は実体経済(GDPの約6割をも占める国内消費)には何の役にも立っていません

日銀による金融緩和と株価

一方、ここに日経平均株価を重ね合わせると、違った風景が見えます。

消費支出と日経平均株価

緑のラインが日経平均株価です。各月の終値を利用しました。
日経平均株価は金融緩和に大きく反応し、上昇しています(3度目は若干アヤシイですが)。
そりゃそうです。自ら買い手になって、株を買い上げているのですから。
これぞ相場操縦、投機行為。どこかの共産主義大国もビックリの官製相場と言えるでしょう。

しかし、無理やり株価を上げたところで、消費支出は下がり続けています。株価と実体経済は全くの別モノであることもお分かり頂けるのではないでしょうか?

  • 景気が良くなる → 株価が高くなる、これは正しいですが、
  • 株価が高くなる → 景気が良くなる、これは間違いということですね。

日銀による金融緩和の功罪

日銀による金融緩和は株価を上昇させたが、実体経済には何のメリットもなかった、これ以外の解釈があるなら教えてほしいです(笑)。

当初からこのブログで、私はアベノミクスを全否定してきましたが、こんな壮大な社会実験をするまでもなく、この結果は十分に予想できました。
企業経営者はいくら金利の安い資金があったところで、ビジネスチャンスがなければ投資はしません。
日本の大多数の経営者は優秀です。消費増税や人口減少によって(上のグラフのように)国内消費がシュリンクすることが分かっている中、設備投資や人的資本への投資(雇用拡大や賃金上昇)をする経営者がいたら、その企業は潰れるでしょう。一部のニッチな商機を見つけている企業は別にして。
そして、銀行だって、そんなことは百も承知な訳です。金融緩和によっていくら資金が調達しやすくなったところで、「よし、金があるからアホな経営者に融資しよう!」ということにはならないのですよ(笑)。
最終需要が見えない限り、資金は停滞を続け、資本市場に流入するのがオチということです。
そもそも金融緩和とは景気回復に処方する薬ではありません。金融危機(市場にお金がない状態)に処方する薬です。日本経済は間違った薬でシャブ漬けにされた状態にあります。

「株価が上がったからいいではないか…」という方もおられるとは思います。
結果が全ての投資の世界ですから、アベノミクスで儲かったという方にはお見事というしかありません。
しかし、株価上昇と引き換えに、日本経済は大きな爆弾を抱えてしまいました。それは、

  • 日本の株式市場の流動性がなくなってしまった。
  • 日銀のバランスシートが株などという不安定な資産で膨らんでしまった。

日銀も永遠に株を買い続けることはできません。もう買わないとなった時、株式市場には大きな下落圧力がかかるでしょう。
日銀が大きな含み損を抱えた時、果たして「円」(日本銀行券)は信用を維持できるのでしょうか?
皆様は給料を「円」でもらい、貯金を「円」でしている方が多いと思います。その価値が大きく毀損したら…。
そして、日銀がバランスシートを正常な状態に戻そうとしても、市場に流動性はありません。一体どうやって売却するというのでしょう…。
歴史上誰も経験したことのない領域で、どんな結末を迎えるのか、私にも分かりません。しかし、自己防衛はできます。私がドルを保有し、米国に証券口座を開設し、米国株に投資を始めたのは、こういった分析と無縁ではありません。

次回は同じグラフに、今度は為替をマッピングしたものをお見せします。果たして円安にすれば日本経済は復活するのか?、というお話です。