ここまでの説明で、

・ 自国通貨立て国債のデフォルトなど議論するだけ無駄
・ 組織の借金は個人の借金と違って、必ずしも全額返済する必要はない

という点はご理解頂いたかと思います。借金の大きさだけにフォーカスをあてて危ないと騒ぐ必要はないということです。では、ニュートラルな視点で実際に日本国(政府)の財政を見て頂ければと思います。

負債だけでなく、資産に注目

財務省の公表データはあちこちに散らばっていて分かりにくいのですが、平成26年度の国(政府)の財政状況がこちらで確認できます。負債額1,171.8兆円、資産額679.8兆円、差引▲492.0兆円。詳細な内訳を知りたい方はこちらをご覧ください。

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そうなんです。資産額を単純に引いただけで、実質的な借金は半分以下の500兆円弱にまで小さくなります。当たり前ですが、国(政府)は負債だけでなく資産も保有しています。どれだけ大きな負債があっても、それをカバーする資産を持っていれば何の問題もありませんよね。資産100万円の人が1,000万円の借金をするのと、資産1億円の人が1,000万円の借金をするのとでは訳が違います。少なくとも、GDP比などという数字より、資産との比較の方がはるかに意味があります。

又、よくある補足に「国の資産の大半は性質上直ちに売却して借金の返済にあてられるものではない」というものがありますが、これもまた妙な理屈です。

皆様、ローンを組まれる際、全額一括返済を想定して直ちに現金化できる資産を準備されますか?
貸す側の銀行も、皆様の勤務先等の情報を収集し、未来の返済能力含め、総合的に審査しませんか?

本当に価値のある資産ならば借金をするための信用は生まれますし、国は徴税権という資産に現れることのない強力な武器まで保有しています。そういった返済能力を総合的に判断するのが本来であって、直ちに現金化できる資産を有しているかどうか(しかも全額返済を前提に!?)、というのはあまりに乱暴です。それに、もし保有資産が本当は価値がありませんというなら、それこそ政府は税金を使ってこれまで何をしてきたんだという話です。土下座では済みません。

負債の話はこれだけ頻繁にメディアを賑わすのに、資産の話がほぼ皆無なのはとても不思議です。政府が日本の将来に資する投資をしているかどうかのチェックの方が余程大事で、本来これは逆でないといけないでしょう。本当に価値のある投資なら、借金くらいすりゃいいんです。実際は公共投資の質は必ずしも高くない訳ですが(笑)、話がそれるので今回は割愛します。

上にある資産と負債を横に並べたチャートはバランスシートと呼ばれます。借金や自己資金等、お金をどうやって集めたかが右側の「負債」や「純資産」に現れます。そして、そのお金をどう使っているかが左側の「資産」に現れます。バランスシートの「負債」だけを見て、財務状況を評価する人などいません。たとえ多くの「負債」を抱えていても、「資産」から見えてくる投資活動が健全であれば、未来に価値が創造されるならば、その信用を元にお金を出す人が必ず出てきます。

負債=別の誰かの資産

もう1点、大事なポイントがあります。それは、「負債」というのは別の誰かの「資産」になっているということです。例えば銀行預金。これは前回も書いた通り、銀行にとっては利子をつけて返済しなければならない「負債」ですが、預けている我々には「資産」です。

では、国(政府)の負債は一体誰の資産になっているのでしょうか?
「日本国債は国内消化率が高い」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。実際、日本国債はその95%近くが国内で消化されています。つまり、国(政府)の負債は、別の日本関係者(個人や企業)の資産となっているのです。日本政府の借金を人口で割り、「一人当たり××の借金」などというメディアがありますが、我々はお金を借りてなどいません。全く逆で、預金を通して国にお金を貸している側です。

いよいよ、核心に近づいて参りました。

日本=日本政府

ではありません。日本政府の中にはそう考える人もいそうですが(笑)、実際は、

日本=日本政府+日本企業+日本人

です。日本政府だけを抜き出せば、確かに「資産<負債」という債務超過の状態ですが、日本全体で足し算したらどうなるでしょうか?次回に続きます。