サラリーマンを卒業して独立し、淡路島に移住して2年半の実体験を元に、田舎移住のメリットデメリットに感じることを率直にまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

メリットデメリット
生活コスト(固定費)の低下運動不足
食を含めた住環境の向上エンターテインメントの変化
活躍する自営業者との出会い補助金施策によるデモチベート

以上を踏まえた上で、結局田舎移住はアリなのか、それともナシなのか、

  • 今は都会で会社員をしている
  • いつか独立、起業を考えている

といった読者を想定し、改めて私の考えをまとめてみます。私自身は楽しくやっていますし、結論から言えば「アリ」が答えですが、それにはいくつか条件があります。

①ライフスタイルに合わせ、心底好きだと思える環境を

それぞれが理想としているライフスタイルに合った、本気で好きだと思える地が見つかるかどうか、最終的にはこの点に収斂するように思います。経済的なメリットだけでは、下手をすれば「生活のために我慢して田舎に住んでいる」ともなりかねません。

私の場合、理想としているライフスタイルは、

  • 日本のどこかに拠点を持ちつつ、
  • 日本も海外も含めて、その時々で行きたい場所へと出ていく

といったものです。仕事でしばらく都会に居を移したくなるかもしれませんし、プライベートでどこかに長期滞在したくなるかもしれません。が、大好きな日本のどこかに拠点を持ちたい…。
会社員を辞め、通勤というものがなくなると、必ずしも東京に住む必要はありません。では、拠点をどこに置こうか、そう考えた時に出会ったのが淡路島でした。

  • 海も山もあり、自然に囲まれた田舎暮らしが楽しめる一方で、
  • 大概の生活用品は島内でそろって不自由がなく、
  • 神戸と橋でつながっていて、国内外問わずどこにでもアクセスが簡単
  • そもそも関西出身の私には馴染みがあり、近くに友人もいる

という環境はそうそうあるものではありません。しかも、家を建てようと計画していた中で、ここしかないと思える土地に出会い、信頼できる地元の方々にも出会うことができました。今振り返ってみても、運と縁に恵まれたとしか言いようがありません。

理想とするライフスタイルは人それぞれでしょう。北海道や沖縄など特定の地域に愛着を持たれている方もいるでしょうし、趣味のサーフィンに明け暮れる毎日を求める方もいれば、温泉三昧の暮らしにあこがれる方もいるかもしれない。自然の中で子育てしたい方、災害に無縁な地で暮らしたい方…。逆に高層マンションから都会の夜景を楽しみたい方が田舎移住で快適に暮らすのはそもそも難しいのかもしれません。
いずれにしろ、それぞれのライフスタイルに合った、本気で好きだと思える環境をもし見つけることができたら、そこに住む幸せはプライスレスなものになるはずです。

②経済的メリットの確保

ただし、私の場合は移住だけでなく、独立という別の環境変化もありました。経済的に家計を支える、最低限の責任は果たさねばなりません。田舎暮らしはコストが上がるという方もおられますが、仮にそうなったら私は東京に住み続けていたと思います。実は、移住前も情報をとって十分にシミュレーションしましたし、移住後も固定費を全てExcelにまとめて検証していたりします。
私が選んだ淡路島の場合、上下水道のコストが約2倍に上がりましたが(月々にならすと4,000→8,000円)、その他の住宅費、光熱費、食費等、全て下がりました。簡単な例を参考までに紹介しましょう。

<住宅費>
東京に住んでいた頃は駐車場込で15万円/月の賃貸、今は持家なので、一概に比較することはできませんが、30年住み続けたとすると、東京での住宅費は15万円×12ヶ月×30年=5,400万円。淡路島の持家はこの半分とまではいきませんが、維持費や固定資産税を含めてもはるかに安いです。しかも、今の家の方が広く、自分好みの間取りで、諸々の設備や素材も格段に良くなっています。ご想像の通り、土地の値段が比べものにならない程安いのが効いています。

<光熱費>
東京に住んでいた頃の光熱費は電気とガスを合わせて約2万円/月。今はこの半分程度です。田舎に住むと光熱費が上がるという方は確かにおられますが、我が家の場合は誤差とは思えないくらいに下がりました。
原因は、おそらくエアコンをつける機会が極端に減ったことだと思います。周りにエアコンをガンガンにつけたビルもありませんから、窓を開けていれば自然の涼しい風が入ってきますし、夜になればしっかり温度が下がります。逆に、東京在住時は、夜でもエアコンをつけずに過ごすなんて考えられなかったです。
又、最近の住宅の断熱材性能が効いている可能性もあります。冬は逆に窓を閉め切っておけば太陽の光だけでポカポカ暖かかったりします(それでも床暖房を設置して、寒くなったらつけてるんですけどね)。
古民家のような昔ながらの家屋に住むと、住宅費がより下がる一方で光熱費が上がる可能性はあると思います。住宅費と光熱費はセットで考えるといいのかもしれません。

こういった経済的なメリットなしに、東京を離れて田舎移住を決断できたかと言われれば、私の場合はNoです。脱サラ、独立へと舵を切る際、固定費削減というテーマを田舎移住で解決するのは一考に値すると思います。

③会社員としての仕事を大切に

独立や起業に興味を持ちつつ、会社員をしている方々は、在職中に何がしか自力で稼ぐスキルを身に付けたいとお考えのことでしょう。私自身もそうでしたし、今でもいかに成長するか、もっと実力をつけて強いメンタリティを持つか、考える毎日です。

しかし、こういった側面で考えると、正直言って田舎移住には大きなリスクが伴います。
日本全国どこに行っても地方というのは行政による補助金のバラマキが行われ、残念ながらまともなビジネスマンがまず寄り付かない環境です。そんな環境を拠点にするのですから、成長の機会はかなり限定されると考えておいた方がいいでしょう。成長には人からの刺激が不可欠です。幸運にも、私は魅力的な自営業者、中には起業家と思えるような方にも出会うことができましたが、かなり運と縁に左右される気がします。
制度があれば、それを利用しようと考える人間が現れるのは当然だとは思います。私だってスキルを身に付けない内に移住していたら、行政の妙な補助金施策を利用していたかもしれない。そして、一端利用してしまったら、当初の志とは違う方向へどんどん流されていくのでしょう。

なので、仮に心の底から好きだと思える環境を見つけ、経済的なメリットを確保できたとしても、移住を実行に移すのは、会社員としてある程度のスキルと人脈を築いてからにした方がいいのではないでしょうか?会社員を長く続けることは独立後のチャレンジの時間が短くなることでもあるので、難しいところではあります。ただし、独立と移住をセットにする際はより注意深く考えた方がいいでしょう。
もしくは、会社員を継続しながら移住する道を模索するというのも手です。実際、淡路島には神戸の会社に勤めながら田舎暮らしを楽しんでいる移住者もいます。

会社の看板を背負って仕事をする中で築くことのできたスキルや人脈は本当に貴重なもので、淡路島に移住した今でも、私が前へと進む原動力になっています。勤めていた会社には心底感謝の気持ちしかありません。
給料、出世、安定…、会社員にもいろんな目標があると思いますが、独立や起業に興味のある方は、何よりもスキルアップと人脈形成に貪欲になることをオススメします。