昨日の記事で「米国の金融政策が年内に大きな転換点を迎えそうだ」と書きました。昨日はトレードの話をメインにすべく、その転換の内容にまでは踏み込みませんでしたが、今回改めて内容を紹介します。

情報源はFOMC議事録です。
FOMCというのは、アメリカの中央銀行FRBや地区ごとの連邦準備銀行が集まり、アメリカの金融政策を決定する最高意思決定機関です。この議事録によって為替相場が動くことも多く、FXをされる方はよくご存知なのではないかと思います。ちなみに、私は普段は全く気にしておりません(笑)。

ただ、今回の議事録の最後にある”System Open Market Account Reinvestment Policy”というタイトルの箇所は要注目です。System Open Market Account(SOMA)は中央銀行による債権購入の仕組みのこと。つまり、金融緩和のために購入してきた債権の再投資方針が書かれており、リーマンショック以降続けてきたアメリカの金融緩和のExitの方法論が今回かなり見えてきたのです。

金融緩和とは、中央銀行が債権を買い取り、その購入資金が市場に流れ出すことによって実現します。そして、これまで中央銀行は購入した債権が償還を迎えた(=期限を迎えて返済された)場合、すべて再投資してきたのです。
この点、日本の報道には大きな誤解があります。日本では、アメリカの利上げによって中央銀行から市場に流れ出していた資金が逆流を始める、というような報道が散見されますが、これは事実ではありません。利上げとは、あくまで資金を調達する際の金利を上げることであって、市場から資金を引き揚げる訳ではないのです。利上げは行っても再投資は継続されており、市場に資金は残っている、これが事実です。

ところが、今回の議事録には、その再投資を辞める(=市場から資金を引き揚げる)ための具体的な方法と時期がかなり明確に書かれています。ポイントは、

  • 金額にキャップ(上限)を設け、そのキャップを超えた分だけ再投資を継続する
  • キャップは最初は小さな額に設定、3ヶ月ごとに増やす(=再投資額は減っていく)
  • 少しずつ、かつ予測可能な方法で、実行する
  • 期待通りの経済状況なら、年内にも始める

となるでしょうか。いよいよ、アメリカの金融緩和が本格的にExitに向けて動き出すのです。これは利上げなどよりずっと本質的でインパクトの大きな話ですが、日本のメディアは報じませんね。まあ相変わらずです(笑)。

株式市場というのは、マクロ経済だけでなく個別の企業業績や需給など、様々な影響を受けます。決して「経済の先行きを映す鏡」などではありませんが、マクロ経済の影響を受けるのは確かです。アメリカ、そして日本の株式市場にどんな影響が出てくるかと考えた時、「今の日本の株式市場は果たして耐えられるのだろうか」とふと疑問を感じ、昨日の雑感につながったという訳です。

P.S.
ちなみに、私自身いつもこの議事録に目を通している訳ではありません。
ただ、日本のマスメディアでは何も分からないため、以前もお知らせしたこちらのメルマガにお世話になっています。アメリカのマクロ経済に興味のある方にはオススメです(念のためですが、私は一読者というだけで何の利害もありません)。
私は普段はメルマガを読んでいて、興味のあるテーマがあった時だけ原文を見るということを繰り返していますが、最近は単語にも慣れてきて大分自力で読めるようになってきました。