最近なかなか時間がとれず、かなり出遅れた感がありますが、東証市場再編についてまとめておきます。1/11に東京証券取引所の新市場区分が発表されました。

市場再編の概要

東証1部/東証2部/JASDAQ/マザーズといった市場区分が、プライム/スタンダード/グロースといった3市場に再編されます。各市場区分にはそれぞれ上場基準が設定されていますが、ポイントを1つ挙げるなら流通株式時価総額でしょう。一言でまとめるなら、プライム市場に上場するには、大きな流通株式時価総額が必要になります。
さらには、流通株式の定義も見直され、株主の保有比率に関わらず、流通の実態がない株式は全て流通株式から除外されます。東京証券取引所から公開されている資料には政策保有株について明確に言及されていて、「一国の中央銀行が自国の株を買う」などという馬鹿げた政策の影響を排除する、といった側面もあるのでしょう。非常に合理的な変更だと私は思います。

新市場移行後のTOPIX構成銘柄のルールはまだ不透明な部分が多いのですが、当面は、

  • 既存のTOPIX構成銘柄を継続採用(スタンダード/グロースを選択した銘柄も含む)
  • プライム市場の基準を満たさない銘柄は段階的に除外
  • 新たにプライム市場に上場した銘柄は追加採用

となります。

プライム市場入りする銘柄に注目していた

指数ヲタクの私としては、東証1部以外から新たにプライム市場入りしそうな銘柄、言い換えるとJASDAQやマザーズ銘柄の中で流通株式時価総額が大きな銘柄に注目しておりました。2銘柄ほど例を挙げたいと思います。

4385メルカリ

時価総額の大きなマザーズ銘柄といえば、この銘柄でしょう。実際、開示資料でも積極的にプライム市場への意欲を示しています。

2021/10/29開示
当面はグロース市場を選択するが、プライム市場への変更に向けた準備に入る

2022/1/14開示
プライム市場への変更申請を行った

1/11のJPXの発表ではグロース市場となっており、事前の開示通りと言えます。

2702日本マクドナルドホールディングス

時価総額の大きいJASDAQ銘柄の代表です。こちらは新たな市場区分について、事前の開示は一切ありませんでした。しかし、私は

  • プライム市場の上場基準は満たしていそう
  • より流通時価総額の小さな6787メイコーはプライム市場を選択(ただし、2021/6にJASDAQから東証1部に市場変更)
  • MSCIの構成銘柄でもある

ということでトレード対象としておりました。残念ながら、1/11のJPX発表では、東証1部以外からプライム市場入りした銘柄はゼロという結果だったのですが、発表前後の値動きを掲載しておきます。

日付始値高値安値終値出来高調整後終値*
2022年1月12日5,0105,0504,9204,9802,947,700
2022年1月11日5,1105,1705,0905,170934,100JPX新市場区分発表
2022年1月7日5,0805,1005,0605,090425,300
2022年1月6日5,0705,1205,0505,110544,800
2022年1月5日5,0805,1205,0605,090685,700
2022年1月4日5,0905,0905,0405,070545,200
2021年12月30日5,0805,1205,0505,090933,000
2021年12月29日5,1305,1505,0305,0503,178,600権利落ち日
2021年12月28日5,2605,2905,2005,2902,302,800権利付き最終日

株価は発表直前に上がり、翌日には下がっています。似たようなことを考えていた投資家はいたのでしょう。実際、JPXの公開資料の中で、東証一部以外からプライム市場入りする銘柄のリバランスについて、JPXと機関投資家との間でQ&Aも行われていました。
私自身のトレードは、権利落ち以降から少しずつ拾って、半分を1/11のザラ場で手仕舞い、残りの半分はJPXの発表内容を確認してからすぐにPTSで手仕舞いといったもので、微々たるものですが、利益は出ました。PTSに感謝であります(笑)。

改めて振り返ると

1/11のJPX発表内容は極めてシンプルなもので、

  • 東証二部 → スタンダード市場
  • JASDAQスタンダード → スタンダード市場
  • JASDAQグロース → グロース市場
  • マザーズ → グロース市場(2122のみスタンダード市場)

となっています。今回取り上げた2銘柄の例を見ても、東証は初めからJASDAQやマザーズ銘柄のプライム市場入りは認めるつもりがなかったのでしょう。プライム市場入りするなら、事前に東証1部に変更上場するか、移行が終わってから改めて申請してくれ、ということなのだと想像します。
指数にも影響が及ぶため、連続性を重視したという点では理解できるのですが、

  • 実際の流通時価総額に応じた市場再編、さらには
  • 代表的な日本企業をカバーする指数という意味でのTOPIXの価値向上

という点では、すごく中途半端な再編になったような…。個人的には、多大なコストをかけた割に大して何も変わっていないように感じます。これでTOPIXがより魅力的になったと感じる投資家がいればいいんですけどね。