円安で沈みゆく日本経済

円安が止まりません。

円安で輸出企業の業績が向上し、日本経済は復活する

マスメディアはこう連呼していた訳ですが、実際に円安となった今、何か恩恵を感じる方はいらっしゃいますでしょうか?

私はこれまで円安による日本経済復活論、そしてアベノミクスとも呼ばれる国策としての円安誘導を完全否定してきました。根拠は以下の2点。

マスメディアと正反対のことを申し上げているのは重々承知していますが、私は決してマスメディア批判をしたい訳でも、目立ちたい訳でもなく、(ビジネスの最前線で戦っている方からすれば)ごくごく当たり前の一般常識を語っているに過ぎません。

1ドル80円が120円になったのです。
日本という資源のない島国に住む我々は、貯蓄も給料も1.5倍になっていて初めて同じ資力を維持していることになります。そんな日本人はごくごく一部のはず。コロナやウクライナ情勢といった外部要因はあるものの、どちらが真実に近いか、もはや明白ではないでしょうか?

円安にする(=価値を下げる)のは簡単です。信用を潰せばいいのですから。が、円高にする(=価値を上げる)のは一朝一夕にはいきません。信用を築き直す必要がある訳ですが、皆様ご存知の通り、本来通貨の番人たる中央銀行が、日本では政府の子会社に成り下がってしまいました。中央銀行の独立性に疑問が生じ、バランスシートに株式などという不安定な資産を抱え、信用も何もあったものではありません。株式市場が下落に転じた時、何が起きるでしょうか?残念ながら、「終わりの始まり」が来ないよう、もはや祈るしかありません。本当に厄介なことをしてくれたものです。

これまでの政策を肯定してきたエコノミスト、アナリスト、御用学者は、「いや、今の円安は悪い円安だから…」と仰っているようですね。“良い円安”がどういう状態か、聞いてみたいものであります(笑)。
そして、同じ人間が「ルーブル安でロシア経済が滅ぶ」と言っているのですから、もう支離滅裂。
それでもマスメディアを通して発信すれば一定の信者には受け入れられる、もはや宗教であります。ただ、あと10年もすれば、こういった職業もなくなっているかもしれません…。

超弱小自営業者となった今の私は、自分の身は自分で守るしかありません。
判断ミスは命取りであります。以前も書いた通り、

アベノミクスは、円を持っていたら負け

です。円資産を減らし、不動産(自宅)、そして米ドル資産(大半は株式)に振り分けてきました。
「実際に売却するまで損益が確定しない」というのが不動産ですが、昨今の原材料価格の高騰や、ちょっとした淡路島ブームもあり、今のところ投資としてもなかなかのものになっていそうです。
もう一方の米ドル資産の方は成功といっていいでしょう。為替で1.5倍、さらにドルベースの株式評価額が約2倍、つまり円ベースでは約3倍になっているのですから。

米ドル

このブログでも何度か

  • 日本株は短期トレードの対象とすべき
  • 腰の据わった投資をするなら米国株(米ドル資産)

と申し上げてきました。なぜか?

それは、米国ほど未来が明るい国が他に見当たらないからです。
通貨には、その国の経済力はもちろんのこと、軍事力、政治の成熟度、社会の成熟度、それらを支えるインフラ、国民性に至るまで、もろもろの国力全てが反映されます。
つまり、通貨を安くして喜ぶなど、どれだけドMなんだという話なのです(笑)。

まず、米国は若年労働人口が増えている唯一の先進国です。
つまり、米国内には次々に需要が生まれ、しかもこの傾向は当面続きます。これだけ確かな経済統計はないのですよ。この需要を狙ったビジネス、例えば住宅市場なんかは、非常に魅力的な投資先だと思われます。
人口が増える国というだけならば他にいくらでもありますが、資本主義が成熟し、金融インフラが整い、法治国家で真っ当なお裁きがある、そんな信用に値する国が他にあるでしょうか?

さらに、供給サイドを見ても、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表される巨大なIT企業が生まれ、シェール革命により今や世界最大の産油国となりました。
日本では平成という時代が終わりましたが、新たな国際企業は1社も産まれませんでしたね(あえて挙げれば、ソフトバンク、ダイキン…でしょうか)。残念ながら、未だにトヨタやソニーの栄光を語っている国とは、新陳代謝のレベルが全くもって異なります。

  • 若年労働人口の増加によって次々に生まれる需要と、
  • 健全な新陳代謝に支えられて次々に生まれる産業(供給)

によって米国経済はますます成長する=ドルが高くなる(安くなるのではありませんよ)、というのが私の見立てということです。

ユーロ

私はユーロに投資しようと思ったことは、一度もありません。
それは、この通貨が構造的な欠陥を抱えているからです。

もう10年以上前になりますが、ギリシャ経済が危機に陥ったのを覚えておられる方も多いでしょう。EUによる金融支援だの、ギリシャ自身の緊縮財政政策が先だの、いやいや債務削減合意だの、EUを巻き込んで大きな混乱が起き、最終的にギリシャは事実上デフォルトとなりました。

以前記事に書いたことがありますが、もしギリシャの通貨が独自通貨ドラクマだったら、ドラクマの価値は大きく棄損したでしょう(ドラクマ安!)。が、ギリシャの資産が大幅に安くなったどこかのタイミングで、リスクをとるビジネスマンが現れ、再生の道が切り開かれる…というのが通常のプロセスです。
しかし、ギリシャの通貨は共通通貨ユーロになっていました。当たり前ですが、ユーロを紙切れにすることはできません。つまり、ユーロは、参加国から独自通貨という経済の調整弁を奪っているということになります。さらに問題なのが、参加国が破綻した時にどう切り離すのか、ユーロ側にも明確な処方箋がないことが明らかになりました。この矛盾は現在でも解決されていません。

政治と経済の関係がN:1となっているのは、無理があるように思えてなりません。
もし将来、ユーロが解体されてドイツマルクが復活したら、マルクは買い、だとは思います。

人民元

中国はどうでしょうか?

国内需要という意味では、一人っ子政策の弊害はあるのでしょうが、これから裕福な中国人がますます増えていく訳で、期待値が大きいのは間違いありません。
さらに、供給サイドを見ても、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)に代表される国際企業が次々に生まれ、力強い新陳代謝が見てとれます。

中国経済がこれから益々大きくなる、これはおそらくその通りなのだろうと私も思います。しかし、人民元や中国株への投資には私はネガティブです。というか、もし友人知人に相談されたら、「絶対にやめた方がいい」とアドバイスします。

忘れてならないのは、中国が共産主義国家だという事実です。
共産主義には、そもそも私有財産という考え方がありません。全て国のものなのですよ。つまり、中国共産党が「没収します」と言えば、抵抗する方法は一切ありません。ちなみに、法律や契約書なんて中国では全く意味を持ちません。そして、共産主義のこういった考え方が決して絵空事でないことは、中国ビジネスの経験者ならば、もはや常識なのです。これ以上は書けませんが(笑)。

念のためですが、私は善悪の話をしている訳でも、好き嫌いの話をしている訳でもありません。日本の常識を、外国にあてはめることそのものがナンセンスなのですから。
そしてもう一点、特に中国という国をひとまとめにして何かを語ろうとする人は、まず間違いなく中国を知らない方です。中国共産党と中国人、さらには北京とそれ以外の地域、全く異なる考え方と行動があります。

私には中国ビジネスで痛い目にあった経験があります。一方で、中国人にお世話になった経験も数多くあります。
会社員として中国ビジネスを担当していた時、隣に座って一緒に仕事をしていたのが中国人でした。中国語、英語、日本語、韓国語を自由にあやつり、平均的な日本人より、はるかに仕事もできました。さらには、日本人以上にその場の空気を読み、周りに気を使い、発言に慎重になっていた彼を見て、私は「もっと言いたいことを言っていいと思うよ」と伝えたくらいです。
最近では、シストレWebを設計していてあることに悩んだ時、自分だけでは解決できないと思った私は、その道のプロを紹介してもらうべく、友人知人に相談して周りました。わらしべ長者のように人脈をつたい、最終的に元ゴールドマンサックスに勤務していたという米国人にたどり着いたのですが、この方を紹介してくれたのも中国人でした。ずっと恩を感じていたのですが、後になって彼から別途相談があり、逆にアドバイスする機会にも恵まれました。縁とは本当に不思議なものです。

私は世界で活躍する中国人とネットワークを築きたいと思っています。
しかし、そんな私でも、中国への投資に関してはNoです。リスクが大き過ぎます。
そもそも中国人の多くが、中国を信じていません。一寸先は闇であります。1年前にロシアの軍事行動を予測できた方がいたでしょうか?
何か特別な、信頼できる人脈を持っているのならば話は変わってくるかもしれませんが、「決して甘くない」ということだけはお伝えしておきたいと思います。

まとめ

円安がどこまで続くか、それは誰にも分かりません。
しかし、日本経済が下り坂であることはハッキリしています。この国の最繁栄期を築いた偉大な先人たちのおかげで、スタートラインはものすごく高いところにありますが、この先が下り坂であることを疑う方は、あまりいないのではないかと想像します。
緩やかな下落をサーフィンのように乗りこなせばいい、当初は私もそう考えていたのです。しかし、消費増税とアベノミクスによって、その考えは改めざるをえなくなりました。下落の角度は間違いなく急になったと見るべきです。

私は嘆いているのではありません。そんな暇は私にはありません(笑)。
事実を事実として認識し、生き延びるために対策を打つまでです。そして、実際に円安が進む中、このブログの読者の中に、同様の危機感を持つ方がいるなら、私の処方箋を共有しようと考えた次第です。

特に現役世代で、これからまだまだ資産を築かねばならないという方は、資産を円に集中するのではなく、(株式投資をするかどうかは別にして)米ドル資産を一定割合保有しておくことは、極めて合理的な戦略だと思われます。
さらに、信頼できる友人/ビジネスパートナーといった人的資本も含め、米国に足場を作ることができれば、必ずや皆様の人生の大きな武器となることでしょう。
ご自身の活動の場を海外に広げたいという方も、まず攻略すべきは間違いなく米国であり、私自身も同様の方針で活動しています。

最近こんな活動を目にしました。ビジネスとしても興味深いですし、まだまだハングリーな日本人ビジネスマンがいることを頼もしく思います。私も負けてられないですね。
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