国内消費に支えられた日本経済

久しぶりになってしまいましたが、日本経済(=株価ではない)の定点観測をまとめます。総務省統計局が2/5に家計調査の結果を公表しています。今回は2020年12月までのデータが出そろっており、コロナの影響を見る上でも要注目であります。例によって、分析対象とするのは消費支出。日本は「GDPの約6割が国内消費」という極めて内向きな内需国家であり、決して輸出国家ではありません。日本経済を分析するならば、この消費支出に焦点を当てるのが筋です。

では、早速グラフをご覧頂きましょう。

消費支出_202012

棒グラフ(青)が統計局が発表している消費支出の生データです。この数字は、どうしても「年末や年度末に消費が増える」といった季節変動を受けるので、私の方で12ヶ月移動平均を計算して折れ線グラフ(オレンジ)を追加しました。縦軸を拡大すると、下のようになります。

消費支出_移動平均_202012

随分分かりやすくなったかと思います。ご覧になってみて、いかがでしょうか?

消費増税によって大きく傷ついた日本経済

日本では「株価が上がっているから経済が順調である」という風潮が一部に見られますが、日本経済は引き続き絶不調と言えます。皆様の肌感覚の方がよほど正しいのです。そして、その原因が2度の消費増税にあることも、もはや明らかでしょう。「直前の駆け込み需要→大きく下落」という非常に分かりやすい傾向が見て取れます。

まず、1度目の消費増税によって国内消費は東日本大震災の水準を割り込むところまで下落した、これがFactです。東日本大震災の頃、私はまだ東京で会社員をしていましたが、「モノを買いたくても買えなかった」という強烈な記憶が残っています。その水準すら下回った訳で、まさに惨憺たる状況と言えます。
その後、駆け込み需要があったものの、2度目の消費増税による下落の角度はさらに急になりました。途中からコロナの影響も受けているため正確な分析は難しいですが、将来コロナが収束した時にまた振り返ってみたいと思います。

いずれにしろ、上のグラフは

国内消費に大きく依存した経済を持つ日本において、消費税の弊害がいかに大きいか

を端的に物語っています。一部の人間は日本の財政が危機的だとあおりますが、このブログで何度か言及している通り、世界を見渡しても日本ほど盤石な財政を持つ先進国を私は知りません。日本と日本政府をきちんと区別するだけで景色は一変するのです。百歩譲って危機的だとしても、消費税という形で税収を増やすのは絶対にやめた方がいい、と私は思います。

金融緩和は実体経済の役には立たない

1度目の消費増税の前後に、前代未聞の金融緩和が実行に移されました。株価が大きく反応したため「黒田バズーカ」などともてはやされましたが、グラフを見れば、

実体経済には何の役にも立っていない

ことが一目瞭然でしょう。

上流からどれだけお金を流そうが、実需がなければお金は回らない

という当然の帰結でありまして、このような分析を待つまでもなく、当初から一部の方は警鐘を鳴らしておられましたね。が、いまだに日銀は株を買い続けています。「そんな金があるなら医療体制のサポートにでも回せよ」と思うのは私だけではないでしょう。

ちなみに、株価や為替は金融緩和に素直に反応しています。ご参考までに、日経平均株価やドル円の値動きを重ねたグラフもご紹介しておきます。

消費支出_移動平均_NK225_202012

消費支出_移動平均_USDJPY_202012

いわばドーピングによって株高/円安になった訳ですが、そこに何の意味があるのか、私にはサッパリ分かりません。一部の方にはうれしいのでしょうか…。

実体経済が復活し、その結果として株高になったり円高(円安ではない)になったり、というのであれば本当に喜ばしいことですが、人為的な資本市場の操作を喜ぶ感性が私にはありません。又、輸出企業に勤めていた経験からも断言できますが、よく言われる「円安によって輸出企業が復活」というのは完全なFake Newsです。日本の優秀な輸出企業はもはや価格競争などしていないことは以前ご説明した通りです。

もしかしたら「これだけ景気が悪いのに、どうして株価が上がるんだろう?」と感じている方もおられるかもしれません。が、株価とは元来そういうもので、市場参加者の需給の結果でしかありません。”専門家”と言われる人たちの「経済の先行きを移す鏡」などと言う言葉は、真に受けない方がいいでしょう。誰も否定できませんが、肯定もできないのですから。富士山はいつか爆発する、といった類の話と大差ありません(笑)。

GoToキャンペーンに経済を回す力はない

GoToキャンペーン、私も利用した経験がありますが、一方どこか変だと感じられている方も多いのではないでしょうか?「なぜ観光と飲食だけが救われるのか」と。全くその通りでして、私が今回最も注目していたのが、この政府主導のキャンペーン施策の結果でした。結論はグラフにある通りでして、

マクロ経済の役には全く立っていない

ことがハッキリしました。もちろん、観光や飲食に携わる方の、そのまた一部の方の役に立っているのは想像できます。が、その他大勢の方は困ったままであり、日本経済全体の政策にはなっていないということです。

「経済を回す」などと大きなことを言っていますが、単なるキャンペーン施策です。そもそもキャンペーンとは、民間企業ならば不況時に真っ先に切り捨てられる経済活動です。理由は簡単で、実際の費用対効果がハッキリしないからです。しかも、今回の施策は、観光、飲食、そしてズブズブの関係にある広告代理店(笑)にフォーカスした極めてミクロな政策でありまして、私は非常に懐疑的な目を向けていました。ちなみに、

こんなことに税金が…

と感じているのは、私だけではありません。コロナ禍以降、私は複数の医療関係者と連絡をとり、医療現場の実態を人より少しだけ知っています。絶対に迷惑をかけたくないので詳細は書きませんが、「医療環境の改善より、人を動かす(=ウィルスを広める)キャンペーン施策にご執心」というあまりのアホらしさに、辞めていくスタッフが増えており、残されたメンバーでいかにこの難局を乗り越えるか、頭を抱えているのが実態だったりします。何か大病を患っても医療サービスを受けられなくなる、既に実際に起きている地域もあるようですが、皆様がお住まいの地域でも本当にそんな日がやって来るかもしれません。

「医療を優先するか、経済を優先するか」という点において、様々な意見があるのは理解できます。私だって立場が少し違えば意見は変わるかもしれませんし、そんな議論に参加する気はそもそもありません。が、このコロナ禍の状況で、人を動かし、一部の利害関係者へのバラマキでしかなく、経済効果も極めて限定されたキャンペーン施策に税金が使われるのが全くもって理解できないのです。

この状況で「金がない」なんて言えるはずはなく、金融緩和もGoToも即座にやめて、医療従事者へのサポートや別の経済施策にあてて頂きたいと切に願います。残念ながら、コロナ収束まで人の動きは極力抑えた方がいいのは確かです。しかし、お金は動かしたい。それも、経済の隅々にまで。消費減税を超える施策はないと思うのですが、いかがでしょうか。