前回書いた通り、私は

マネーフォワードクラウド会計全力法人税で作成した資料をベースに、不明点をネットで調べる
(※一部アフィリエイトリンクを利用しています)

という作業を繰り返し、複雑に見えた法人税申告書を少しずつ理解できるようになっていきました。
今回は、法人税申告書を自力で作成しようとされる方を対象に、法人税確定申告のポイントと思われる項目を列挙してみました。私自身が実際に苦労し、あらかじめ理解していれば随分とスムーズに進められたのに…と思う内容です。ただ、私は税理士ではないので最終確認はご自身でお願いします。

Step1: 計上すべき売上と費用をもれなく拾う

まずはここからスタートです。当然だと思われるでしょうが、個人の確定申告と違い、実際にキャッシュが動いていなくても計上すべき売上(未収入金)と費用(未払金・未払費用)を全て拾わなければなりません。

例えば株式売買の場合、約定日と受渡日の間に3日のタイムラグがあります。つまり、売買確定後、実際にキャッシュが動くまでに3日かかる訳で、期末ぎりぎりに株式を売買して受渡日は来期となった場合、今期の未収入金/未払金として計上する必要が出てきます。さらに、有価証券はその保有目的によっては期末時点で時価評価し、評価差額もPLに計上しなければなりません。又、労使折半で納める社会保険料についても、期末が銀行の営業日でない場合、引き落としが翌期首になるので注意が必要です。

あらかじめ計上基準を明確にした上で、(たとえキャッシュが動いていなくても)全ての売上と費用を拾いきることから決算処理はスタートします。事務作業効率化のため、普段はキャッシュベース(現金主義)で処理し、決算月には計上基準(実現主義)に沿って処理するのも問題はないようですが、私は基本的に普段から実現主義ベースで会計処理するようにしています。

私の会社は固定資産や棚卸資産を保有していないという背景もあるかもしれませんが、全ての売上と費用を拾ってマネーフォワードクラウド会計に入力して仕訳帳を作成し、全力法人税と連携させると勘定科目内訳書はほぼ自動で作成されます。しかも、無料。内訳書に1つ1つ転記していく作業を通して、BSやPLといった会計書類と比較、検算するといいでしょう。一点、「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」だけは妙な単語が出てきて悩みましたが、これは次で説明します。

Step2: 「会計上の利益」から「法人税法上の所得」を計算する

当初、私は会計ソフトで決算書類を作成し、税引前利益を計算したら、後は単純に税率をかければいい、そう考えていました。しかし、これだと妙なことが起きてしまいます。
仮に、私の会社が今期すごく儲かっていたとします。そこで、こんな悪知恵を働かせたらどうなるでしょうか。

  • 自分自身に臨時の役員報酬を払い、会社の利益を少なくして、法人税を減らす?
  • 飲み会しまくって交際費を計上し、会社の利益を少なくして、法人税を減らす?

役員報酬も交際費も会計上は間違いなく費用ですが、こんなことができたら、まともに法人税を払おうと考える経営者はいなくなってしまいますよね。実際は、

  • 会計上の利益=収益-費用
  • 法人税法上の所得=益金-損金

と別になっており、会計上は費用計上できても、法人税法上は損金として認められないものがあります。損金算入/損金不算入という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。想定以上の利益が出たからといって急に役員報酬を増やしたところで、損金不算入となり、税金の支払義務は残るという訳です。考えてみれば当たり前の話で、大変合理的です。

つまり、法人税の確定申告書では、「会計上の利益」から損金不算入/益金不算入となる項目を加減算し、「法人税法上の所得」を計算する必要があるのです。これが確定申告書「別表4」で、いわば法人税法上のPLにあたります。BSにあたる「別表5(1)」とも連携していて、法人税申告の肝となる書類といえるでしょう。
したがって「別表4」記入前に、あらかじめ損金不算入もしくは益金不算入となる項目を洗い出しておく必要があります。役員報酬は先程の「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」、交際費は「別表15」がその補足資料となりますが、他にも会社の状況に合わせて別表を作成しなければなりません。

私の会社の場合、役員報酬は月々の給与相当だけ、交際費もごくわずかな金額だったので簡単に済むかと思いきや、たまたま株式の配当金を受け取っていたために複雑になってしまいました。配当金は所得税が差し引かれて銀行口座に振り込まれますが、ここに法人税を課税すると2重課税となります。このため、所得税額控除という制度で調整するために「別表6(1)」を、一部益金不算入にするために「別表8(1)」を提出しました。いずれも「別表4」の補足資料であることは同じです。

Step3: 別表4の流れを理解する

Step1で「売上」と「費用」を全て拾い、Step2で「会計上の利益」から「法人税法上の所得」を計算しました。いよいよ法人税申告の肝となる「別表4」の記入となる訳ですが、この書類が少々曲者なんです(笑)。あまり細かい説明をするつもりはありませんが、この書類の一番上は「当期利益又は当期欠損の額」となっていて、この金額を起点として諸々の補正を加えていく訳ですが、ここには“税引き後”の損益が入ります。
これ、不思議な話だと思いませんか?記入前にあらかじめ法人税額を計算しておかなければならないのですから。納税側の感覚だと、まず”税引き前”の損益を記入し、補正を加えて法人所得を計算し、最後に法人税を算出する、という流れを想定してしまいますが、そうはなっていません。全ての計算を終えた後、税務署が検証するための資料を作成すると考えた方がいいでしょう。

税引き後損益からスタートし、あらかじめ計算した法人税額を”加算”した上で、諸々の補正を加え、法人所得を算出するという流れが意識できれば、比較的スムーズに記入が進むはずです。そして、別表4が作成できれば、別表1に最終的な数字を転記して完成となります。

法人税申告書を自力で作成しようと思われる方はあまりいないかもしれませんが、参考になれば幸いです。小規模な法人なら、税理士にお願いしなくても自力でできますので。自分の時間を他に当てた方がずっと儲かるというような確固としたビジネス基盤ができるまで、私は自力でやろうと思います。