もう少し淡路生活について書こうとも思いましたが、旬が過ぎてしまいそうなので、こちらを記事にしておきます。「S&P日本国債格付け引き下げ」だそうです。昔なら大体これに続いて、「だから消費税増税を!」とくるのですが、今回はそこまでのメディアはないようです。ただ、意図的に書いているのか、本当に理解していないのかは分かりませんが、かなり誤解を招く表現になっています。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF16H0P_W5A910C1EE8000/
http://www.asahi.com/articles/ASH9J6QSFH9JULFA03T.html
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150917-OYT1T50029.html

日本国債に対する格付けは存在しない

まず、そもそも日本国債も含め、先進国の自国通貨建て債券に格付けなど存在しません。国債とは、ざっくり書けば「未来のある時点で金利をつけて返すから、○○円貸して下さい」という取引です。日本国であれば絶対返せると思いませんか?だって、お札を刷ればいいんですから!

ギリシャ危機の時に、日本も同じようになるといったメディアがありましたが、あり得ません。ギリシャの場合、ユーロを刷ることができない訳です。仮にドラクマであったならば、刷ることができたでしょう。もちろんドラクマの価値は下がり、経済は大混乱です。しかし、全てが安くなったどこかのタイミングで、投資家がチャンスと見て投資を始め、国の再生プロセスが始まります。ところが、通貨がユーロになっているために、ギリシャは通貨を切り下げることすらできません。ギリシャは自国通貨という調整弁を失っているのです。これはユーロの抱える本質的な問題点で、私には緊縮財政だけで解決するとは思えません。

話がそれましたが、先進国の国債のデフォルトを議論すると、究極的には、その国が刷るお札に価値がない=円やドルといった通貨の価値がないという話につながり、経済学の前提そのものが崩れてしまいます。徴税権があり、通貨発行にも影響力を持つ「国」というプレイヤは、それだけ有利な立場にありますし、日本は先人たちの努力により先進国に相当する信用まで勝ち得たということです。日本国債の格付けなど、全くナンセンスであり、メディアでそういったコメントをする人の話は信用しないことです。少なくともプロではありません。

S&P社の格付け

では、S&P社の格付けとは何なのでしょうか?元のプレスリリースはこちらにありますが、「ソブリン格付け」とありますね。「国債格付け」とは一言も書かれていません。実際、このプレスリリースを見ると、

  • 強い対外ポジション
  • 相対的に豊かで多様化した経済
  • 政治の安定性
  • 安定した金融システム
  • 高齢化やデフレ継続を背景に悪化した巨額の財政赤字

について言及されています。民間企業であるS&P社が国の政治も含めた総合力を勝手に格付けしているもので、国債の返済能力を測定している訳ではないということがお分かり頂けるのではないでしょうか?こういった背景を理解せず、国債暴落とかいう人までいますが、話半分に聞かれた方がいいです。実際、国債市場は静かなものです。

日本について長所も短所も書かれているので、格付けどうこうより、海外の民間企業が日本をどう見ているか、という視点でご覧になられると面白いかもしれません。1人当たりの平均所得は大きく減っている等、「アベノミクスで景気回復」という日本の報道とはかなり趣が異なります。

どちらが皆様の肌感覚に近いでしょうか?