先週、トラスコ中山の株主総会に出席してきました。
私が株式投資を始めて20年以上が経ちますが、会社員をしていると日程的に厳しいものがあり、株主総会に出席したのは今回が初めてです。今の私は自己責任でいかようにも時間をコントロールできるため、機会があれば出席しようと考えていたのですが、ちょっとユニークな会社だったのと、開催場所が大阪難波ということで、参加を決めました。

トラスコ中山は、株主優待に興味を持たれている方には比較的よく知られた会社だと思いますが、株主総会にも力を入れていて、その出席率(全株主の何パーセントが株主総会に出席したか)が非常に高いことでも有名です。上場企業の平均は約1%のところ、トラスコ中山は約7%なのだとか。

初体験の私に他と比べることはできません。が、実際に出席してみて、その理由が分かった気がします。それは中山社長のお人柄。聞いていて納得感があり、何より楽しいです。外面を取り繕う訳でも株主にこびへつらう訳でもなく、時に株主の短期的な利益につながらない話もされますが、常に本質をつきながらポジティブに話されるので、言葉がすっと入ってきます。一緒に働いてみたいと思ってしまう、これぞ、The “経営者”であります。

ホワイト企業とブラック企業

昨年トラスコ中山が健康経営優良法人(ホワイト500)に認定された、という話から始まりました。言わばブラック企業の逆。そういったアピールをされるのかと思いましたが、中山社長はこんな話をされていました。

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トラスコ中山もずっと”ホワイト”だった訳ではありません。少し前は”グレー”、その前は”ブラック”、さらにその前は”漆黒”とも言える時代がありました。私も毎朝会社に着くと、嫌で嫌で仕方がなかった。しかし、そんな環境をどうしたら変えられるのか?、そう考えながら働いたことで、随分と頭が鍛えられた気がします。
会社の成長には社員の成長が不可欠です。そして、オリンピック選手でさえ日頃の練習なく金メダルをとることはできません。ホワイトとなったトラスコ中山のこれからを考えた時、社員教育はどうあるべきなのでしょうか。新入社員に「どうしたらいいんでしょう?」と質問されたら、先輩社員はどう答えるべきなのでしょう。懇切丁寧に教えるのがいい先輩社員だと言われるが、本当にそうでしょうか。「君はどう思う?」この問いかけの積み重ねこそが社員を成長させる、私はそう思います。
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ホワイト企業認定をキッカケとして、今後はこれまでと同じことをしていては成長が止まる、と株主に問題提起された訳です。経営者とはそういう思考を巡らせるものかと大変勉強になりました。

そもそも「ブラックかホワイトか」といった議論には、「会社の年齢」という軸を加えないと意味がないのです。ずっとブラックに安住している企業は糾弾されてしかるべきです。が、生まれつきのホワイト企業なんて果たして存在し得るのでしょうか。創業期には、ブラックとかホワイトといった基準を超越したところで、同じ志を持った人間が集まり、昼夜問わず仕事に没頭しているのではないでしょうか。そして、それは”稼ぐ仕組み”ができあがるまで、延々と続きます。創業メンバーというのはやはり偉大なのです。

私は随分成熟した大企業の会社員でしたが、それでも新しいチャレンジをする時は、終電続きだったり、職場で夜を明かしたりといった経験は普通にありますし、時には上司から罵声を浴びたことだってあります。今日は会社行きたくないな…と思った回数なんて数えきれません。しかし、だからといってブラックだとかパワハラだとか、そんな風に思ったことは一度もないんですよね。どれだけつらくても、それだけの仕事を任されることがうれしかったですし、上司であろうが同僚であろうが、正解の見えない仕事ならなおのこと、懸命に取り組む者同士のぶつかり合いは仕方がないと思っていました。もちろん、一定の信頼関係があってこそ、ですが。

社外取締役と役員の暴走

質疑応答も活発に行われていました。東京と大阪をテレビ会議でつなぎ、それぞれの会場ごとに質問を受け付ける中、ある株主から「社外取締役の義務化についてどう考えているか?」という質問がありました。この問いに対する中山社長の回答がまた印象に残っています。既に社外取締役を置いていること、ルールが決まったらそれに従うことを前置きした上で、こんなことを話されたのです。

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社外取締役の人数を増やしたら役員の暴走が止められるか、という点では私は全くそうは思いません。役員の暴走に最初に気付くことのできる人は誰でしょうか?答えは社員だと私は考えています。トラスコ中山でオープンジャッジシステム(360度評価)を導入しているのは、そういった考えが背景にあります。時間の関係上、詳細をお話することはできませんが、非常に単純化してお話すると、社員が役員を評価するシステムです。
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社員が上司を評価すると別の課題が出てくるとは思います。なぜなら、「社員にとっていい上司」とは「自分を高く評価する上司」となるに決まっているのですから(笑)。それが会社にとって必要な人材とどの程度一致するか、を追求しなければならず、きっと様々な工夫を加えておられるのでしょう。

いずれにしろ、話のあちこちから、より本質的な課題に迫ろうという信念が感じられ、非常に心地よい時間を過ごさせて頂きました。もし来年もトラスコ中山の株主だったらこの総会にはまた出席するでしょうし、今度は全く別の企業の総会に出席して、企業文化の違いみたいなものを感じてみたいと思っております。

P.S. 法善寺横丁

総会後、法善寺横丁を散策してきました。大阪ミナミの繁華街にあるにも関わらず、情緒あふれる石畳の路地に、ちょっとした名店が軒を連ねています。大阪観光に組み入れるのも結構オススメだったりするので、簡単にご紹介します。ご興味のある方は是非訪れてみて下さい。

水をかけて願うとどんな願いでも聞いてくれる法善寺の不動明王(水掛不動さん)。
全身が苔に覆われ、独特な雰囲気があります。

法善寺

えび家さんの洋食御膳。いつか行こうと思っていた有名店でランチを頂きました。

えび家洋食御膳

夕食は、三平のお好み焼き。

三平お好み焼き

このお好み焼きを食べて帰るため、一日大阪におりました(笑)。
どこでも仕事ができるというのはいいものです。

法善寺横丁